街くらべ
サービス解説 / 更新 2026-09-26

街くらべの「住みやすさスコア」はどう計算しているか

街くらべでは、全国1,916市区町村のうち1,740市区町村に 0〜100点の「住みやすさスコア」を付けています。 このスコアがどんな設計思想に基づいているか、何を測っていて何を測っていないかを、 設計の説明だけでなく、実際に付いたスコアの分布と具体的な街の内訳を見ながら解説します。

7つの指標とその重み

スコアは以下の7指標を組み合わせて算出しています。 「重み」は総合スコアに実際に効く比率で、設定値の合計が100%になるよう正規化した後の値です。 「評価の向き」は、その指標の値が大きいほど高く評価するのか、小さいほど高く評価するのかを示します。

指標 使用データ 評価の向き 重み
安全性 犯罪率(刑法犯認知件数 ÷ 人口、件/千人) 低いほど高評価 26.1%
子育て環境 15歳未満人口の割合 高いほど高評価 17.4%
家賃の安さ 1R(ワンルーム)の平均家賃 低いほど高評価 17.4%
平均所得 平均課税対象所得 高いほど高評価 13.0%
保育施設の充実 保育所・認定こども園の数 高いほど高評価 10.4%
医療アクセス 診療所の数 高いほど高評価 8.7%
活気・利便性 人口 高いほど高評価 7.0%

※内部の設定値の合計は1.15で、実際にはこの合計で割った比率が使われます。表はその正規化後の値で、四捨五入の関係で合計が100%にならない場合があります。

計算そのものは単純です。各指標を後述する「全国パーセンタイル」(0〜100)に変換し、 それぞれに重みを掛けて足し合わせたものが総合スコアになります。 ある街の総合スコアが60点なら、7つの指標の全国パーセンタイルを重み付きで平均すると60になった、という意味です。 複雑な統計モデルや機械学習は使っていません。誰でも手計算で再現できることを優先しました。

重みをどう決めたか

なぜ「安全性」が26.1%と最も重いのか

治安が悪い街は、他の条件がどれだけ良くても選択肢から外れやすいという事実があります。 家賃が安く保育施設が充実していても、子どもを安心して外で遊ばせられない環境では意味がありません。

これを設計の言葉で言うと、安全性は「加点要因」ではなく「失格条件」に近い性質を持ちます。 他の6指標が「あれば生活が豊かになる」ものであるのに対し、安全性は「なければ生活が成立しない」という閾値的な役割を担っています。

そのため、7指標の中でスコアへの影響が最大になるよう26.1%の重みを置きました。 これは単なる「治安が大事だから」という感覚論ではなく、 住居選択において安全性が他要素と非対称な関係にあることを反映した設計です。 次に重い「子育て環境」(17.4%)との差が8.7ポイントあるのは、この非対称性を表すためです。

「子育て環境」に施設数ではなく人口割合を使う理由

子育て環境の指標として、保育所の数ではなく「15歳未満人口の割合」を主軸に置いています(重み17.4%)。 この選択には意図があります。

保育施設数は自治体が増やすことができる数値なので、「子育て世帯に選ばれているか」とは必ずしも一致しません。 一方、15歳未満の人口割合は、実際に子育て世帯がその街を選んで住んでいる結果として現れる数字です。 施設が充実しているから子どもが多いのか、子どもが多いから施設が整っているのか——因果は複雑ですが、 いずれにせよ「子育て世帯に選ばれている街」を示す指標として、人口割合の方が実態に近いと判断しました。

なお保育施設数は別指標(重み10.4%)として別途加算しているため、 実際の施設の充実度も無視はしていません。 ただし施設数は人口の多い街ほど大きくなる「絶対数」なので、大都市に有利に働く指標である点は意識しておいてください。

「パーセンタイル」という物差し

各指標の値は、そのまま足し合わせることができません。家賃は円、犯罪率は件/千人、人口は人と単位がばらばらで、 桁も違うからです。そこで街くらべでは、すべての指標を 「その指標にデータがある市区町村の中で、下から何%の位置にいるか」(パーセンタイル、0〜100)に変換してから合算しています。 同じ値の街が複数あるときは、その順位の平均を割り当てます。 犯罪率や家賃のように「低いほど良い」指標は、100から引いて向きを揃えます。

この方式には、はっきりした長所と短所があります。

長所:極端な値に引っ張られない

人口は分布が極端に歪んだ指標です。全国で最も人口が多い 横浜市(神奈川県)の3,753,398人は、 人口のパーセンタイルがちょうど中央にあたる 韮崎市(山梨県)の27,798人の 約135倍です。 もし生の値を使えば、この1つの街の存在だけで他の街の「活気」の差がほとんど見えなくなります。 パーセンタイルに直すと、前者は99.9、後者は50.0という比較可能な数字になります。

短所:絶対的な水準を表さない

パーセンタイル90は「全国の9割の市区町村より良い」という意味であって、「90点分良い」という意味ではありません。 たとえば全国的に診療所が少ない状況であれば、パーセンタイルが高くても医療機関に困る可能性はあります。 逆に、全国の大半が十分な水準を満たしている指標では、パーセンタイル30でも実生活で困ることは少ないかもしれません。 順位の上下と、実際の水準の高低は別物です。

もう一つ、母集団が変わればパーセンタイルも変わります。 この記事で扱うのは全国の市区町村を母集団にした値です。各市区町村ページの「都道府県内順位」は、 同じ指標を都道府県内の市区町村だけで並べ直した別の計算なので、全国パーセンタイルとは一致しません。

注意:安全性の元データは都道府県単位です

最も重い「安全性」に使っている犯罪率は、警察庁の統計が都道府県別に公表されているため、 全国1,916市区町村に対して47種類の値しかありません。 つまり同じ都道府県内の市区町村は、安全性のパーセンタイルがすべて同じになります。 「隣の市より治安が良いか」はこのスコアでは判別できず、安全性の項目は 「どの都道府県にあるか」を評価していると読むのが正確です。 同じ県内の街同士を比べるときは、安全性以外の6指標の差を見てください。

実際に付いたスコアの分布

設計の話はここまでにして、この計算を全国のデータに当てたとき、実際にどんな点数が付いたのかを見ます。 以下の数字はページを表示するたびに街くらべのデータベースから算出しています。

採点対象

1,740市区町村

全1,916のうち90.8%

中央値

50.7点

平均 49.3点

最高

83.6点

熊本市(熊本県)

最低

4.0点

南牧村(群馬県)

グレード別の市区町村数(採点対象1,740市区町村)
グレード 総合スコア 市区町村数 割合 件数の棒グラフ
S 80点以上 2 0.1%
A 65点以上 80点未満 207 11.9%
B 50点以上 65点未満 698 40.1%
C 35点以上 50点未満 552 31.7%
D 20点以上 35点未満 231 13.3%
E 20点未満 50 2.9%

最上位のSグレード(80点以上)に入ったのは2市区町村、採点対象の0.1%だけです。 Aグレード(65点以上 80点未満)まで含めても12.0%にとどまります。 最も多いのはBグレード(50点以上 65点未満)の698市区町村で、全体の40.1%を占めます。 BとCを合わせた中位帯は71.8%、DとEの下位帯は16.1%でした。

パーセンタイルの重み付き平均という性質上、総合スコアは中央に寄りやすいはずです。 実際に40点以上60点未満の範囲に入る市区町村は928件、採点対象の53.3%でした。 半数前後が中央付近に収まる一方、残りは上下に広く散っています。「大半が50点前後」とまでは言えません。 最高と最低の差は79.6点です。

「スコア50がちょうど全国の真ん中」と説明してきましたが、厳密には中央値は50.7点で、 50点から0.7点高い位置にあります。 ほぼ一致していると言える差です。

実例で読む:スコアの中身

中央値の街は、どんな内訳で「中央」になっているのか

採点対象1,740市区町村の中で、総合スコアが中央値(50.7点)に最も近いのは 角田市(宮城県)の50.7点、グレードBです。 この街を例に、7つの指標がどう総合スコアに変わるのかを表にしました。 「寄与」はパーセンタイルに重みを掛けた値で、これを足し合わせたものが総合スコアです。

角田市(宮城県)の住みやすさスコア内訳 / 総合 50.7点
指標 実際の値 全国パーセンタイル 重み 寄与
安全性 3.35 件/千人 69.2 26.1% 18.0
子育て環境 10.4% 35.6 17.4% 6.2
保育施設の充実 3 施設 30.9 10.4% 3.2
家賃の安さ 40,693 円/月 73.5 17.4% 12.8
医療アクセス 12 施設 43.9 8.7% 3.8
活気・利便性 26,469 人 48.9 7.0% 3.4
平均所得 275 万円 24.6 13.0% 3.2
寄与の合計 50.7

角田市が「中央」なのは、すべての指標が真ん中だからではありません。 最も高いのは「家賃の安さ」のパーセンタイル73.5、 最も低いのは「平均所得」の24.6で、 その差は48.9ポイントあります。 高い指標と低い指標が打ち消し合って、結果として総合が中央値に落ち着いている形です。 総合スコアは便利な要約ですが、こうした内訳を見ないと、その街の性格は分かりません。

同じ総合スコアでも、中身はまったく違う

総合スコアが近い街ほど「似た街」だと思いがちですが、そうではありません。 採点対象を総合スコア順に並べ、隣り合う2市区町村の差が1点以内のペアのうち、 指標別のパーセンタイルが最も食い違っていた組み合わせが次の2つです。 堺市(大阪府)は56.3点、 山江村(熊本県)は56.3点で、 小数第1位まで同じ点数です。

総合スコアが近い2市区町村の指標別パーセンタイル(差は B − A)
指標 A:堺市56.3点 B:山江村56.3点 差
安全性 6.0 97.4 +91
子育て環境 71.0 96.9 +26
保育施設の充実 98.2 30.9 −67
家賃の安さ 28.3 — —
医療アクセス 99.2 0.1 −99
活気・利便性 99.2 9.9 −89
平均所得 89.7 2.6 −87

最も差が大きいのは「医療アクセス」で、99ポイント離れています。 堺市は「医療アクセス」で上回り(99.2対0.1)、 山江村は「安全性」で上回っています(97.4対6.0)。 総合ではほぼ同点でも、重視する条件が違えば選ぶべき街は変わります。ランキングの順位だけで候補を決めず、各市区町村ページの「スコア内訳」まで見ることをお勧めします。

データが欠けている街はどう扱うか

官公庁の統計は、すべての市区町村について揃っているわけではありません。 指標ごとに、データを持っている市区町村の数を実際に数えると次のようになります。

指標別のデータ保有状況(全1,916市区町村)
指標 重み データあり 欠損 欠損率
安全性 26.1% 1,915 1 0.1%
子育て環境 17.4% 1,915 1 0.1%
保育施設の充実 10.4% 1,741 175 9.1%
家賃の安さ 17.4% 1,263 653 34.1%
医療アクセス 8.7% 1,741 175 9.1%
活気・利便性 7.0% 1,916 0 0.0%
平均所得 13.0% 1,734 182 9.5%

欠損が最も多いのは「家賃の安さ」で、653市区町村(34.1%)に値がありません。 家賃は民間の賃貸物件データに基づく指標なので、賃貸物件そのものが少ない町村では平均を出せず、値が入りません。 1つ以上の指標が欠けている834市区町村のうち、人口が分かる834件の78.7%は人口30,000人未満で、欠損は人口規模の小さい自治体に偏っています。

欠損の扱いは2段階です。まず、欠けている指標は無かったものとして扱い、 残った指標の重みだけで加重平均を取り直します。 たとえば重み20%の指標が1つ欠けていれば、残り80%分の指標のパーセンタイルを80で割り戻して総合スコアにします。 欠損を0点扱いにしないのは、「データがない」と「その指標が悪い」を混同しないためです。

次に、有効な重みの合計が全体の69%を下回った市区町村はスコアを付けません。 残り半分程度の指標で「住みやすさ」を語るのは無理があるからです。 この規則により、全1,916市区町村のうち176市区町村(9.2%)がスコアなしになっています。 人口が分かっている176件のうち2件(1.1%)は人口30,000人未満で、小規模な町村に限らず、中規模以上の市区町村も一部含まれています。

採点された1,740市区町村の内訳を見ると、7指標が完全に揃っているのは1,082件、 1つ以上の指標が欠けたまま残りの指標で採点されているのが658件です。 後者のスコアは、揃っている指標だけで見た相対位置なので、同じ点数でも前者より情報量が少ないことを覚えておいてください。各市区町村ページの内訳では、欠損した指標は「データなし」と表示しています。

「スコアなし」は「住みにくい」ではなく「比較に必要な情報が不足している」を意味します。 スコアがない街を候補から外す必要はありません。その街のページには、取得できた指標の実数値は掲載しています。

このスコアで測れないもの

設計上の正直な限界として、以下はスコアに反映されていません。

  • ▲ 通勤・通学の利便性——最寄り駅から職場まで何分かかるかは個人差が大きく、汎用的なデータで表すことが難しいため含めていません。実際の引越し判断では最重要項目になることも多い要素です。
  • ▲ 保育所の待機児童数——施設数は把握できますが、実際に入所できるかどうかは別問題です。都市部では施設が多くても倍率が高い地域が存在します。
  • ▲ 自然災害リスク——ハザードマップの情報は含まれていません。海抜・河川との距離・地盤の強さは命に関わる要素であり、別途確認をお勧めします。
  • ▲ 街の雰囲気・コミュニティ——近隣との関係性、商店街の活況、祭りや地域行事の多さなどは数値化できません。現地を歩かなければわからない情報です。
  • ▲ 市区町村内の地域差——スコアは市区町村を1つの単位として計算しています。同じ市の中でも駅前と郊外では家賃も施設の数も大きく違いますが、その差はこのスコアには現れません。

また、重みそのものが街くらべの価値判断です。安全性を最重視する設計は多くの人に当てはまると考えていますが、 「家賃の安さが何より大事」「医療機関の近さを最優先したい」という人には、この重みは合いません。 その場合は総合スコアではなく、指標別のランキングで自分が重視する項目を直接比べてください。

このスコアは「候補を絞り込む」ための道具として使ってください。 最終的な意思決定は、現地訪問や不動産会社との相談、ご自身の価値観と合わせて行うことをお勧めします。

この記事の数字について(使用データ・算出方法)

出典
  • 警察庁・都道府県警察の公開犯罪統計(刑法犯認知件数、犯罪率の算出に使用)
  • 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(人口)
  • 総務省「国勢調査」(15歳未満人口)
  • 厚生労働省・内閣府の保育所等関連統計(保育所・認定こども園数)
  • 民間賃貸物件データに基づく1R(ワンルーム)平均家賃
  • 厚生労働省「医療施設調査」に基づく診療所数
  • 総務省「市町村税課税状況等の調」(平均課税対象所得)
算出方法
  • 各指標を、その指標にデータがある市区町村の中でのパーセンタイル順位(0〜100)に変換。同値は平均順位を割り当て、「低いほど良い」指標(犯罪率・家賃)は 100 − パーセンタイル に反転
  • 総合スコア = Σ(パーセンタイル × 正規化した重み)÷ 有効な重みの合計。重みは 安全性 26.1%、子育て環境 17.4%、家賃の安さ 17.4%、平均所得 13.0%、保育施設の充実 10.4%、医療アクセス 8.7%、活気・利便性 7.0%
  • 有効な重みの合計が全体の69%未満の市区町村はスコアなし(欠損した指標は0点ではなく計算から除外)
  • グレードは総合スコアの閾値で判定(S: 80点以上 / A: 65点以上 80点未満 / B: 50点以上 65点未満 / C: 35点以上 50点未満 / D: 20点以上 35点未満 / E: 20点未満)
  • 中央値は採点対象市区町村の総合スコアを昇順に並べた中央の値。「同じ総合スコアの2市区町村」は、スコア順に隣り合う差1点以内のペアのうち指標別パーセンタイルの最大差が最も大きい組み合わせ
集計対象
全1,916市区町村のうち、有効な重みが69%以上で採点対象となった1,740市区町村。指標別のパーセンタイルは、その指標にデータがある市区町村を母集団として計算しています。

本文中の順位・平均値・相関係数は、街くらべが保有する全国1,917市区町村のデータベースから ページ表示時に算出しています。 東京都特別区部(23区の合計値を持つ集計行)は二重計上を避けるため全ての集計から除外しています。 元データに欠損がある市区町村は、その指標の集計から除外されます。

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