街くらべ
データ分析 / 更新 2026-09-16

東京23区は本当に家賃が高いのか——データで見る区ごとの意外な差

「東京23区は家賃が高い」というイメージは、都心の水準で23区全体を語ってしまっていることが少なくありません。 23区すべての1R平均家賃を安い順に並べ、近隣3県の主要都市とも突き合わせました。

まず、23区の家賃を全部並べてみる

「23区の家賃相場」と一括りに語られることが多いので、実際の数字を並べます。 街くらべが持つ1R(ワンルーム)の平均家賃データを、安い順にしたものです。

東京23区の1R平均家賃(安い順)
順位 区 平均所得 1R平均家賃
1 足立区 375.1万円 67,137円
2 葛飾区 375.4万円 69,051円
3 板橋区 397.7万円 74,764円
4 江戸川区 398.2万円 76,668円
5 北区 412.5万円 78,950円
6 大田区 464.4万円 84,489円
7 練馬区 447.4万円 84,793円
8 中野区 466.5万円 86,564円
9 荒川区 414.6万円 86,831円
10 江東区 498.6万円 87,291円
11 杉並区 515.8万円 88,097円
12 豊島区 495.9万円 91,320円
13 墨田区 423.5万円 91,812円
14 世田谷区 619.8万円 100,484円
15 品川区 557万円 102,837円
16 台東区 482.2万円 109,840円
17 新宿区 620.5万円 112,012円
18 文京区 707.2万円 112,904円
19 目黒区 716.7万円 129,784円
20 渋谷区 1073.7万円 130,949円
21 中央区 780.8万円 145,644円
22 千代田区 1121.3万円 151,654円
23 港区 1396.8万円 196,115円

緑の網かけは、23区の中央値より家賃が安い区です。

最も安い足立区が 月額67,137円、 最も高い港区が 月額196,115円。 その差は月128,978円(2.92倍)で、 年額にすると1,547,736円の開きになります。 「23区」というひとつの言葉の中に、これだけの幅があります。

23区の1R家賃の中央値は91,320円です。 イメージされがちな都心の水準より、中央値はかなり下にあることが分かります。

近隣県の主要都市と比べると、差はもっと小さい

次に、神奈川・埼玉・千葉の人口20万人以上の都市(43市)と比べます。 「23区は無理だから県外へ」という判断が本当に合理的なのかを確かめるためです。

近隣3県(神奈川・埼玉・千葉)の主要都市の1R平均家賃(高い順・上位10市)
順位 市 1R平均家賃
1 横浜市都筑区 神奈川県 102,048円
2 川崎市中原区 神奈川県 89,783円
3 横浜市青葉区 神奈川県 88,364円
4 横浜市港北区 神奈川県 85,474円
5 川崎市高津区 神奈川県 81,598円
6 川崎市 神奈川県 79,297円
7 川崎市宮前区 神奈川県 76,952円
8 横浜市 神奈川県 75,410円
9 川崎市多摩区 神奈川県 74,116円
10 横浜市神奈川区 神奈川県 73,952円

近隣3県の主要都市の1R家賃の中央値は66,989円。 23区の中央値91,320円との差は月24,331円です。 23区のほうが高いのは確かですが、多くの人が想像するほどの断絶ではありません。

ここが一番言いたいこと

23区で最も安い足立区の月額67,137円は、 近隣3県主要都市の中央値66,989円と 月148円しか違いません。 「家賃が高いから23区は無理」と最初から候補を外す判断は、 少なくとも安い側の区については成立しないということです。

逆方向からも確認できます。近隣3県の主要都市のうち 21市は、 23区で最も家賃が安い足立区より高い水準です。 都県境をまたいだからといって、必ず家賃が下がるわけではないということです。

なぜここまで差が開くのか

都心の区の家賃が突出するのは、需要と供給の関係に加えて、オフィス街としての性格が強いためです。 企業の本社機能が集中し、昼間人口が夜間人口を大きく上回る地域では、 利便性の高さに対して住宅供給が限られ、家賃が高止まりしやすい構造があります。

一方、上の表で下位(安い側)に並んだ区は住宅地としての性格が強く、 都心へのアクセスに電車で20〜40分かかる代わりに住宅供給量が多い。 この「都心からの距離」と「住宅地としての性格の強さ」が、区ごとの差を生む主な要因です。

上の表の所得の列で実際に確かめると、23区内の1R家賃と平均所得の相関係数は r = 0.94(強い正の相関がある)でした。 家賃が高い区ほど住民の所得も高い、という対応関係が23区内でもはっきり出ています。家賃の高さは、そこに住める層の所得水準とセットだということです。

いずれにしても、家賃だけを見て「高い/安い」を判断するより、 所得に対する負担の重さで比べるほうが実態に近づきます。その方法は 家賃と所得の相関から見る「コスパの良い街」で扱っています。

この表の限界——「区」はまだ粗い単位である

正直に書いておくと、上の表は物件探しの結論には使えません。理由は3つあります。

  • ● 区の中の差が、区どうしの差より大きいことがある。同じ区でも、複数路線が使えるターミナル駅周辺や再開発が進む駅前は都心並みの水準になる一方、最寄り駅からバス便のエリアはぐっと下がります。実際の物件探しでは「区」ではなく「駅」単位で相場を見るほうが有効です。
  • ● 1Rの平均である。単身者向けの相場であり、1LDKやファミリー向けの2LDK以上では区ごとの開き方が変わります。
  • ● 築年数・駅徒歩・専有面積が均されている。平均値なので、同じ家賃でも中身は区によって違います。安い区の物件が広いのか古いのかは、この数字からは分かりません。

使い方としては、この表で候補にする区を絞り込み、 そこから先は駅単位・物件単位で見ていくのが現実的です。

まとめ

  • ● 23区内の1R家賃には 月128,978円(2.92倍) の開きがある。都心の水準を23区全体の相場だと思い込まない。
  • ● 区の平均で候補を絞ったあとは、駅単位まで解像度を上げる。区の中の差のほうが大きいこともある。

「23区」という大きな括りで諦めてしまう前に、区ごとの数字を見比べてみてください。

この記事の数字について(使用データ・算出方法)

出典
  • 民間賃貸物件データに基づく1R(ワンルーム)平均家賃
  • 総務省「市町村税課税状況等の調」(平均課税対象所得)
  • 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(人口)
算出方法
  • 23区は市区町村コード13101〜13123の特別区。集計行である特別区部(13100)は除外
  • 中央値は対象市区町村の家賃を昇順に並べた中央の値(平均より外れ値の影響を受けにくいため採用)
  • 近隣県の比較対象は神奈川県・埼玉県・千葉県の人口20万人以上の市
集計対象
家賃データがある東京23区の23区と、近隣3県の人口20万人以上の43市。

本文中の順位・平均値・相関係数は、街くらべが保有する全国1,917市区町村のデータベースから ページ表示時に算出しています。 東京都特別区部(23区の合計値を持つ集計行)は二重計上を避けるため全ての集計から除外しています。 元データに欠損がある市区町村は、その指標の集計から除外されます。

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