街くらべ
データ分析

家賃と所得の相関から見える「コスパの良い街」ランキングの裏側

「家賃が安い」は一見お得に見えますが、その街の平均所得も低ければ、 実質的な負担感は変わらないかもしれません。家賃だけでなく所得もあわせて見ることで、 「本当にコスパの良い街」の輪郭がはっきりします。

データに関する注記

この記事における「所得」は、総務省「市町村税課税状況等の調」に基づく市区町村単位の 平均課税対象所得です。世帯単位の可処分所得や、そこに住む個人の実際の年収を示すものではなく、 あくまで街全体の傾向を示す参考値である点にご留意ください。

「家賃が安い街」は2種類に分かれる

全国の家賃ランキングで下位(家賃が安い)に来る市区町村を眺めると、 実は性格の異なる2種類の街が混在していることに気づきます。

1つは、都心へのアクセスが良いにもかかわらず、何らかの理由で家賃が抑えられている 「掘り出し物」タイプの街。もう1つは、アクセスや生活利便性そのものが弱く、 結果として需要が低いために家賃も安くなっている街です。

家賃の数字だけを見ていると、この2つを区別できません。 ここで手がかりになるのが、その街の平均所得です。

「家賃 ÷ 所得」という補助線を引く

家賃単体ではなく、その街の平均所得に対する家賃の比率で見ると、印象が変わることがあります。 同じ家賃6万円の街でも、平均所得400万円の街と250万円の街では、 住民にとっての負担感はまったく違うはずです。

もちろん、市区町村の「平均所得」がそのまま住民一人ひとりの年収を表すわけではありません。 高所得の住民と低所得の住民が混在していれば平均値は実態とずれますし、 共働き世帯かどうかでも世帯の可処分所得は大きく変わります。

それでも、家賃と所得を掛け合わせて見ることで、「その街の経済水準に対して家賃が 相対的に高いのか安いのか」という、家賃単体では分からない情報が見えてきます。

「都心近接ベッドタウン」がコスパ良好とされやすい理由

都心から電車で30〜40分程度のベッドタウンは、家賃と所得のバランスで見て 有利になりやすい傾向があります。理由は単純で、都心に通勤する高所得層が 一定数住んでいながら、家賃相場は都心部より大きく下がるためです。

都心3区(千代田・中央・港など)で働く会社員が、通勤圏内のベッドタウンに住むというのは 典型的な生活パターンです。この構造がある街では、平均所得が高い水準を維持しながら、 家賃は都心よりずっと抑えられるという「良いとこ取り」が起きやすくなります。

一方で、同じベッドタウンでも都心からの所要時間が延びるほど、 このバランスは崩れやすくなります。通勤の負担が家賃の安さに見合わなくなる境目が、 どこかに存在するということです。

「激安家賃」の地方都市に潜む罠

家賃ランキングの上位(安い順)には、地方の市区町村が数多く並びます。 家賃3〜4万円台という水準も珍しくありません。数字だけ見れば大変魅力的です。

ただし、こうした街では平均所得も相対的に低いケースが少なくありません。 家賃は都心の3分の1でも、所得も都心の3分の2程度しかなければ、 「家賃負担率」で見た実質的なお得感は、単純な家賃の額面差ほど大きくない可能性があります。

さらに、地方では車を持つことが前提の生活になりやすく、 車両費・ガソリン代・駐車場代といった、都市部の家賃には含まれないコストが別途発生します。 家賃の安さだけを理由に地方移住を決める前に、こうした周辺コストも含めた 「生活費全体」で比較する視点が欠かせません。

この視点でも見えないもの

家賃と所得の比率は便利な補助線ですが、万能ではありません。

  • 物価・食費・光熱費など、家賃以外の生活コストは地域差があり、この比率には反映されません。
  • 平均所得は世帯構成(単身か共働きか)による偏りを均してしまいます。
  • あなた自身の収入がその街の平均から離れているほど、この指標の参考価値は下がります。

結局のところ、家賃と所得の比率は「候補を絞り込むための一次フィルター」として使うのが実用的です。 最終判断は、自分自身の収入と、実際に住んだ場合の生活費のシミュレーションで行うべきでしょう。

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