街くらべ
データ分析

政令指定都市20市の家賃比較——一番安いのはどこか、所得に対してはどうか

全国20の政令指定都市の1R平均家賃を比べると、 最も安いのは北九州市の月45,502円、 最も高いのは川崎市の月79,297円でした。 住民の平均所得に対する家賃の重さ(家賃負担率)で並べ直しても、最も軽いのは同じ北九州市です。 家賃の順位・負担率の順位・東京23区との差、そして同じ市の中の区ごとの差まで、実データで確かめます。

政令指定都市20市の1R家賃を安い順に並べる

政令指定都市は、人口がおおむね50万人以上で、都道府県に近い権限を持つ大都市です。 現在は札幌から熊本まで全国に20市あり、どの市も市内がいくつかの「区」に分かれています。 「地方の大都市に住みたいが、どこが安いのか」「政令市どうしでどれくらい違うのか」を確かめるため、 街くらべが持つ1R(ワンルーム)の平均家賃を、市全体の値で安い順に並べました。

政令指定都市の1R平均家賃(安い順・20市)
順位 市 1R平均家賃 平均所得 家賃負担率
1 北九州市 福岡県 45,502円 334.7万円 16.3%
2 熊本市 熊本県 49,091円 338.4万円 17.4%
3 新潟市 新潟県 49,611円 319.5万円 18.6%
4 岡山市 岡山県 52,249円 351.9万円 17.8%
5 札幌市 北海道 52,456円 341万円 18.5%
6 堺市 大阪府 53,125円 362.3万円 17.6%
7 浜松市 静岡県 53,234円 350.7万円 18.2%
8 仙台市 宮城県 55,735円 364.6万円 18.3%
9 広島市 広島県 56,478円 367.8万円 18.4%
10 福岡市 福岡県 56,975円 379.9万円 18.0%
11 静岡市 静岡県 57,041円 356.1万円 19.2%
12 神戸市 兵庫県 58,662円 — —
13 名古屋市 愛知県 59,713円 425.4万円 16.8%
14 千葉市 千葉県 59,827円 397.7万円 18.1%
15 京都市 京都府 60,466円 387.7万円 18.7%
16 大阪市 大阪府 62,219円 372.8万円 20.0%
17 相模原市 神奈川県 62,464円 — —
18 さいたま市 埼玉県 68,926円 423.1万円 19.5%
19 横浜市 神奈川県 75,410円 436.9万円 20.7%
20 川崎市 神奈川県 79,297円 435.4万円 21.9%

緑の網かけは20市の中央値より家賃が安い市です。家賃負担率 = 1R家賃 × 12 ÷ 平均課税対象所得。 「—」は所得データが無い市(神戸市・相模原市)です。

最も安い北九州市は月45,502円、 最も高い川崎市は月79,297円で、 差は月33,795円(1.74倍)、年額にすると405,540円です。 20市の中央値は月57,008円でした。

中央値から上下10%以内(月51,307〜62,709円)に20市のうち14市が収まっており、政令市の1R家賃は多くが似た水準に固まっています。大きく外れるのは表の両端の数市です。

家賃が高い側の5市は川崎市・横浜市・さいたま市・相模原市・大阪市です。 このうち4市が埼玉・千葉・神奈川の首都圏の政令市で、政令市の家賃の高さは「大都市かどうか」より「東京に近いかどうか」で決まる部分が大きいことがうかがえます。 最も高い川崎市と2番目の横浜市の差は月3,887円です。

所得に対する重さで並べ替えると、順位はどう入れ替わるか

家賃の額だけを見ると「安い市=暮らしやすい市」に見えますが、家賃が高い市は住民の所得も高いことがあります。 そこで、1Rの年間家賃を住民の平均課税対象所得で割った家賃負担率で並べ直しました。 「その市の平均的な所得の人が、その市の平均的な1Rを借りると、所得の何%が家賃に消えるか」を表す数字で、低いほど所得に対して家賃が軽いことになります。

なお、神戸市・相模原市の2市は平均所得のデータが無いため負担率を計算できません。 この節の順位は、残る18市だけで付け直しています(家賃の順位もこの18市の中で数え直しています)。

家賃負担率の軽い順と、家賃の安い順との比較(18市)
負担率順位 市 家賃負担率 家賃の順位 入れ替わり
1 北九州市 16.3% 1位 変わらず
2 名古屋市 16.8% 12位 10位上がる
3 熊本市 17.4% 2位 1位下がる
4 堺市 17.6% 6位 2位上がる
5 岡山市 17.8% 4位 1位下がる
6 福岡市 18.0% 10位 4位上がる
7 千葉市 18.1% 13位 6位上がる
8 浜松市 18.2% 7位 1位下がる
9 仙台市 18.3% 8位 1位下がる
10 広島市 18.4% 9位 1位下がる
11 札幌市 18.5% 5位 6位下がる
12 新潟市 18.6% 3位 9位下がる
13 京都市 18.7% 14位 1位上がる
14 静岡市 19.2% 11位 3位下がる
15 さいたま市 19.5% 16位 1位上がる
16 大阪市 20.0% 15位 1位下がる
17 横浜市 20.7% 17位 変わらず
18 川崎市 21.9% 18位 変わらず

「家賃の順位」は同じ18市の中で家賃が安い順に数えた順位。「上がる」は負担率で見ると軽い側へ動く市です。

負担率が最も軽いのは北九州市の16.3%、 最も重いのは川崎市の21.9%で、 中央値は18.4%です。 最軽と最重の差は5.5ポイントあり、所得を考えに入れても政令市の間にははっきりした差が残ります。ただし家賃の額では1.74倍あった開きは、負担率では1.34倍に縮まります。

順位が最も大きく上がるのは名古屋市で、 家賃の安さでは12位なのに、負担率では2位になります。 平均所得が425.4万円と、18市の中央値(366.2万円)を上回っているため、家賃の額ほどには重くならないのです。

逆に最も大きく下がるのは新潟市で、 家賃の安さでは3位、負担率では12位です。 家賃は安いものの、平均所得も319.5万円と中央値を下回るため、所得に対する重さでは中位以下になります。「家賃が安い=家計に楽」とは限らない例です。

18市のうち4市は、家賃の順位と負担率の順位が5つ以上ずれます。 家賃と平均所得の順位相関は ρ = 0.92(18市、強い正の相関がある)で、 家賃が高い市ほど所得も高い傾向がはっきりあります。このため、家賃の額の差がそのまま暮らしの重さの差にはなりません。

全国の市区町村で同じ計算をした結果は 「家賃は手取りの3割」は本当に正しいのかで、 家賃と所得の関係そのものは家賃と所得の相関から見える「コスパの良い街」で扱っています。

東京23区と比べると

政令市を候補にする人の多くは、東京23区と比べてどうかを気にしていると思います。 同じ1R平均家賃で、23区の中央値と並べました。

東京23区と政令市の1R家賃(中央値)

東京23区の中央値は月91,320円、政令市20市の中央値は月57,008円。 差は月34,312円、年額で411,744円です。

23区の中央値を上回る政令市は1つもなく、最も高い川崎市でも月12,023円下回ります。

23区で最も家賃が安い足立区(月67,137円)と比べても、 これより家賃が高い政令市は3市(さいたま市・横浜市・川崎市)です。いずれも首都圏の政令市で、東京近郊の政令市を選ぶ場合は「23区より必ず安い」とは言えません。

所得に対する重さでも比べておきます。23区の家賃負担率の中央値は22.1%です。 政令市(18市)にはこれを上回る市がなく、最も重い川崎市(21.9%)でも23区の中央値より軽い水準です。家賃の額だけでなく、所得に対する重さで見ても、政令市は23区より軽いということになります。

ただし負担率は「その市に住んでいる人の平均所得」で割った数字です。東京から同じ年収のまま政令市に移る場合は、 分母が移住先の平均所得ではなく自分の所得になるので、家賃の額の差がそのまま家計の余裕になります。 逆に、転職して移住先の所得水準に合わせて収入が下がるなら、負担率の差のほうが実感に近くなります。 23区の区ごとの家賃は東京23区の家賃の記事にまとめています。

同じ政令市の中でも、区によって家賃はこれだけ違う

ここまでは「市全体の平均」で比べてきましたが、政令市は市内が区に分かれており、区ごとにも家賃のデータがあります。 区の家賃データがある20市(計175区)について、市内で最も安い区と最も高い区を並べました。差が大きい順です。

政令市の区ごとの1R家賃の幅(市内の最安区〜最高区、差が大きい順)
市(区の数) 最も安い区 最も高い区 差
横浜市 (18区) 瀬谷区 60,622円 都筑区 102,048円 41,426円
浜松市 (7区) 天竜区 27,403円※ 北区 58,576円 31,173円
大阪市 (24区) 大正区 47,511円 天王寺区 78,279円 30,768円
名古屋市 (16区) 港区 42,436円 東区 73,068円 30,632円
京都市 (11区) 伏見区 50,197円 中京区 77,934円 27,737円
さいたま市 (10区) 岩槻区 53,946円 浦和区 76,127円 22,181円
神戸市 (9区) 北区 48,554円 東灘区 69,707円 21,153円
堺市 (7区) 南区 41,536円 北区 58,756円 17,220円
川崎市 (7区) 川崎区 73,248円 中原区 89,783円 16,535円
札幌市 (10区) 厚別区 47,179円 中央区 62,045円 14,866円
広島市 (8区) 安佐北区 44,480円 安佐南区 59,266円 14,786円
福岡市 (7区) 城南区 50,133円 中央区 64,760円 14,627円
新潟市 (8区) 北区 41,558円 中央区 54,275円 12,717円
千葉市 (6区) 若葉区 52,977円 美浜区 64,627円 11,650円
相模原市 (3区) 中央区 57,073円 南区 66,989円 9,916円
北九州市 (7区) 八幡東区 40,422円 小倉北区 48,558円 8,136円
岡山市 (4区) 中区 47,764円 北区 53,996円 6,232円
静岡市 (3区) 清水区 54,005円 葵区 59,439円 5,434円
熊本市 (5区) 西区 46,645円 中央区 51,148円 4,503円
仙台市 (5区) 宮城野区 54,707円 泉区 56,549円 1,842円

※は人口5万人未満の区です。物件数が少なく平均家賃が振れやすいため、幅は大きめに出ている可能性があります。

市内の差が最も大きいのは横浜市で、 横浜市瀬谷区の月60,622円から横浜市都筑区の月102,048円まで、 月41,426円(1.68倍)の開きがあります。 最も差が小さい仙台市でも月1,842円の差があり、 20市の「市内の差」の中央値は月14,826円です。

注目したいのは、横浜市では、市内の区どうしの差が、政令市20市の最安〜最高の差(月33,795円)を上回っていることです。どの市を選ぶかより、市内のどの区を選ぶかのほうが家賃への影響が大きい場合があるということです。

別の角度から見ると、横浜市の最安区(横浜市瀬谷区・月60,622円)より 市全体の平均家賃が高い政令市が、ほかに4市あります。 「家賃が高い市」の中にも、平均的な政令市より安く住める区があるということです。

市の平均は、家賃の高い中心部の区と、住宅地や郊外の区をならした数字です。 市全体の平均だけで「この市は高いから外す」「この市は安いから決める」と判断すると、 市内の安い区を見落としたり、安いはずの市で中心部の高い区を選んでしまったりします。 政令市を比べるときは、市の平均で候補を絞り、そのあと区ごとの家賃まで確認するという2段階で見るのが確実です。

政令市を引越し先の候補にするときの使い方

ここまでの結果を、実際の街選びにどう使うかを整理します。

  • ● 年収が変わらない移住なら、家賃の額で比べる。 リモートワークや同じ会社での転勤など、収入が引越し先の所得水準に左右されない場合は、上の1つ目の表の「家賃の額」がそのまま家計の差になります。 政令市の最安と最高の差は年405,540円で、 23区の中央値と政令市の中央値の差は年411,744円です。
  • ● 現地で仕事を探すなら、負担率で比べる。 移住先で就職・転職する場合、収入はその土地の水準に近づきやすいので、家賃の額より負担率のほうが暮らしの重さに近い目安になります。 家賃が安い市でも、新潟市のように負担率では順位が下がる市があります。
  • ● 候補の市が決まったら、区まで下りる。 市の平均は中心部と郊外をならした数字です。上の区ごとの表で市内の幅を確認し、 通勤先や生活圏に合う区の家賃を見てください。各市のページから区ごとのページへ進めます。
  • ● 最後は駅と物件で確かめる。 区の中でも、ターミナル駅の周辺と郊外の駅では家賃が大きく違います。区の平均で絞ったあとは、駅単位・物件単位で相場を見るのが現実的です。

家賃以外の指標も含めて街を比べる考え方は 引越し先の街を選ぶときに見るべきデータで整理しています。

この比較で分からないこと

正直に書いておくと、この記事の数字だけで住む場所を決めることはできません。理由は次のとおりです。

  • ● 1Rの平均家賃しか比べていない。単身者向けの相場で、1LDKやファミリー向けの間取りでは市ごとの差の出方が変わる可能性があります。このデータでは間取り別の比較はできません。
  • ● 築年数・駅からの距離・広さはならされている。同じ平均家賃でも、安い市の物件が広いのか、古いのか、駅から遠いのかは、この数字からは分かりません。
  • ● 通勤時間は含まれていない。家賃の安い区が勤務先から遠ければ、交通費や時間の負担が増えます。このデータには通勤時間がないため、その分は自分で見積もる必要があります。
  • ● 所得は「住民の平均課税対象所得」で、手取りでもあなたの収入でもない。年金や事業所得も含む平均なので、負担率は市の水準を比べる物差しとして使ってください。また神戸市・相模原市は所得データが無く、負担率の比較に入っていません。政令市の区ごとの所得データも無いため、区単位の負担率は出していません。
  • ● 区の区分はデータの集計時点のもの。浜松市は2024年1月に区を再編して3区になりましたが、このデータは再編前の7区で集計されています。現在の区名とは一致しない点に注意してください。

使い方としては、この記事の表で候補の市と区を絞り込み、そこから先は駅や物件の単位で確かめていくのがおすすめです。

まとめ

  • ● 1R家賃が最も安い政令市は北九州市、最も高いのは川崎市で、差は月33,795円。20市の中央値は月57,008円。
  • ● 所得に対する負担率では北九州市が最も軽い。 名古屋市のように、家賃の額では中位以下でも負担率では上位に来る市がある。
  • ● 東京23区の中央値(月91,320円) を上回る政令市はない。 ただし首都圏などの3市は、23区の最安区より高い。
  • ● 同じ市の中でも区によって家賃は違い、横浜市では最大で月41,426円の差がある。市の平均だけで判断せず、区まで確認する。

よくある質問

Q. 政令指定都市で1Rの家賃が一番安いのはどこですか?
A. 1R平均家賃で比べると、20市のうち最も安いのは北九州市(月45,502円)、最も高いのは川崎市(月79,297円)でした。20市の中央値は月57,008円です。
Q. 所得に対して家賃が軽い政令指定都市はどこですか?
A. 1Rの年間家賃を住民の平均課税対象所得で割った家賃負担率では、所得データのある18市のうち北九州市が16.3%で最も軽く、川崎市が21.9%で最も重い結果でした。神戸市・相模原市は所得データが無いため比較から外しています。
Q. 政令指定都市の家賃は東京23区と比べてどのくらい安いですか?
A. 東京23区の1R家賃の中央値は月91,320円、政令市20市の中央値は月57,008円で、差は月34,312円です。23区の中央値を上回る政令市はありませんでした。

この記事の数字について(使用データ・算出方法)

出典
  • 民間賃貸物件データに基づく1R(ワンルーム)平均家賃
  • 総務省「市町村税課税状況等の調」(平均課税対象所得 = 課税対象所得 ÷ 所得割納税義務者数)
  • 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(人口)
算出方法
  • 政令指定都市は全国20市。各市の「市全体」の行(市区町村コード末尾が100・130・140・150の行)の値を使用
  • 家賃負担率 = 1R平均家賃 × 12ヶ月 ÷ 平均課税対象所得 × 100。所得データが無い市は負担率の比較から除外し、負担率の節の順位は残る市だけで付け直した
  • 中央値は対象の値を昇順に並べた中央の値(件数が偶数のときは中央2つの平均)
  • 家賃と所得の関係は順位相関(スピアマンのρ)で算出
  • 区の行は、市コードの直後の番号帯にあり名称が「◯◯市◯◯区」の行。区の家賃データが2区以上ある市だけを区ごとの比較の対象とした
  • 東京23区は市区町村コード13101〜13123の特別区。集計行である特別区部(13100)は除外
集計対象
家賃データがある政令指定都市20市(うち負担率を算出できたのは18市)、その区175区、比較対象として東京23区のうち家賃データがある23区。

本文中の順位・平均値・相関係数は、街くらべが保有する全国1,917市区町村のデータベースから ページ表示時に算出しています。 東京都特別区部(23区の合計値を持つ集計行)は二重計上を避けるため全ての集計から除外しています。 元データに欠損がある市区町村は、その指標の集計から除外されます。

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